土星の逆行がbitcoinに出会う時：暗号資産業界のスピリチュアルブームの背後にある集団的ヒーリング

原文作者：伞，深潮 TechFlow

AIによる占いはもはや新しいものではなく、顔相分析や麻雀の席選びなど、何でも占えるようになっています。

しかし、暗号資産業界のやり方は少し違い、運命を直接K線チャートに組み込んでいます。

12月13日、暗号ミステリーコンテンツを発信するブロガー @0xSakura 樱花 が新しいものを発表しました。それが「人生K線」と呼ばれるアプリです。

生年月日を入力すると、AIが八字に基づいて1歳から100歳までのK線チャートを生成し、赤と緑のローソク足であなたの人生の運勢を描きます。

このアプリはTwitterで爆発的に話題となりました。初回投稿の閲覧数は330万を超え、3日間でウェブサイトとAPIの利用回数は30万回を突破しました。多くの人が生成されたK線をシェアし、自分の過去の人生の流れと高い一致を感じたと語っています。

さらに驚くべきことに、「エンターテインメントのみ」と明記されたこのツールは、リリースから24時間以内に同名の模倣トークンが登場しました。

なぜエンターテインメント性の高い占いツールが、暗号資産業界でこれほど大きな共感を呼ぶのでしょうか？

その背景には、取引ミステリーの長年の暗流と、暗号資産業界の集団的な不安が一気に解放されたことがあります。

取引業界におけるミステリー派

暗号資産を取引する人がミステリーを信じるのは珍しくありません。ウォール街も同じです。

W.D. Gannは20世紀で最も有名な市場アナリストの一人であり、ウォール街で神秘学とテクニカル分析を最も深く結びつけた人物です。占星術を使って相場を予測し取引していました。

Sorosは『金融錬金術』の中で、自分の背中の痛みの程度で市場リスクを判断すると認めています。市場が反転する時、彼の背中は激しく痛むそうです。

しかし、これらの話は長らく「伝説」の域を出ず、自分がミステリーを取引の指針にしていると公言する人はほとんどいませんでした。

プライベートでは風水を整えたり、運気アップのブレスレットをつけたり、達人に相場を見てもらったりできますが、同業者に知られるとプロフェッショナルでないと見なされます。

暗号資産業界はこのタブーを打ち破りました。

もともと神秘的な属性を持つこの業界では、ミステリーが自然にフィットします。命盤でBTCの来年の運勢を推測する人もいれば、今日の運勢でエントリーするかどうかを決める人もいます。

さらに、近年では暗号資産業界でミステリーについての議論が増え、信じる人も好奇心から参加する人も増え、Twitterではミステリー分析を個性とする暗号資産ブロガーが多数誕生しています。

「人生K線」の爆発的人気は、その一つの表れです。

多くのユーザーがコミュニティで真剣に、あるいは冗談半分で自分の「人生の流れ」について語り合っています。彼らは自分が「迷信」しているとは思っていません。ただ、不確実性に対する感覚を、より面白い方法で同業者と共有しているだけです。

ミステリーはトレーダーの間での位置づけが変わり、ウォール街の秘密から暗号資産業界のSNS上の公開トピックになりました。

なぜミステリーは暗号資産業界でより人気なのか

なぜ暗号資産トレーダーはミステリーを必要とするのでしょうか？

この問いの答えは大きく分けて次の3つの理由があります。

不確実性への不安に対する心理的補償

暗号資産市場は不安を生み出すのに最適な環境です。

7x24時間、年中無休で取引が行われ、サーキットブレーカーもなく、暴騰も暴落も一瞬で起こり得ます。

ここでは、有名人のたった一つのツイートで、あるコインの時価総額が一瞬で数億、あるいは数十億ドル蒸発することもあり、見た目が立派なプロジェクトの創業者が一夜にして姿を消すこともあります。

トレーダーたちは常に「未知のリスク」に直面しています。その最も恐ろしい点は「リスク」そのものではなく、「未知」であることです。

経済学者Frank Knightは1921年にこう指摘しました：リスクは定量化できる確率（例えばサイコロを振ること）、不確実性は定量化できない未知（例えば明日戦争が起きるかどうか）です。

人間は本能的に「不確実性」を恐れ、リスクを定量化できないとき、「偽りの確実性」を作り出して不安を和らげようとします。

そしてミステリーこそが、この偽りの確実性の最良の媒体です。

方向性が見えないとき、今日の取引カレンダーを開けば、少なくとも明確な指示がもらえます。

暗号資産業界では、5.1万人のフォロワーを持つ暗号占星術師 @AstroCryptoGuru が、bitcoinの「誕生ホロスコープ」（2009年1月3日のジェネシスブロック時刻）と惑星周期を組み合わせて予測を行っています：

土星のシグナルはベアマーケット、木星のシグナルはブルマーケットの頂点に対応します。彼は2017年12月のブルマーケットの頂点、2022年のベアマーケット、2024年のBTCの段階的高値を的中させたと主張しています。

このように具体的な日付と天体イベントを結びつける予測方法は、相場が不透明なときにトレーダーに明確な「待ちのシグナル」を与えます。たとえそのシグナルが宇宙から来ていても。

「水星逆行中はエントリーしない」「満月は暴落する」「命盤で来年はBTCがブルマーケット」などの方向性は、複雑なテクニカル分析も難解なホワイトペーパーも必要なく、「運命に従う」だけでいいのです。

ミシガン大学の2006年の研究によると、48カ国の株式市場は満月期間のリターンが新月期間よりも6.6%低いことがわかりました。

これは月が本当に市場に影響を与えているのではなく、集団的な迷信がトレーダーの行動に影響を与えているからです。十分多くの人が「満月は暴落する」と信じれば、彼らは前もって売却し、本当に暴落が起こるのです。

暗号資産業界では、この集団的な不安がさらに強くなります。特にベアマーケットでは、すべての「ファンダメンタル分析」や「バリュー投資」が冗談のようになり、むしろミステリー分析の方が信頼できるように見えます。

だからトレーダーはミステリーを必要とするのです。それがどれだけ正確かではなく、説明を与えてくれるからです。たとえその説明が偽りでも、先の見えない不確実性よりは受け入れやすいのです。

認知バイアスによる自己強化

なぜミステリーは「効果があるように見える」のでしょうか？

ミステリーが暗号資産業界で流行し続けるのは、不安を和らげるだけでなく、「本当に役立つように見える」からです。

これはミステリー自体が正確なのではなく、脳の認知バイアスが自己強化しているからです。

その中で最も典型的なのが確証バイアスです。「満月は暴落する」と信じていると、満月後に暴落した事例だけを覚え、満月後に暴騰したり横ばいだった日は無視します。「人生K線」が今年はブルマーケットだと示せば、ちょっとした上昇も「命盤が当たった」と考え、暴落は「短期的な調整で大勢に影響なし」と説明します。

画像出典 @Drazzzzz

そして暗号資産業界のSNS環境は、このバイアスを何倍にも増幅させます。

「タロットカードの指示通りにETHの先物をロングして、3日で20%稼いだ！」というツイートは、広くリツイートされ、いいねされ、スクリーンショットで拡散される可能性が高いです。

しかし、タロットカードの指示通りに取引して損をしたトレーダーは投稿せず、誰にも見られません。

そのため、コミュニティ全体の情報フローにはミステリーが当たった事例ばかりがあふれ、失敗例はフィルタリングされます。

同様の事例はTwitterで至る所に見られます。例えば今年3月、@ChartingGuyのブラッドムーン予測のタイムウィンドウが到来したとき、市場が上がっても下がっても説明の余地があります：「早めに天井をつけた」「遅れて実現した」「他の惑星の角度と組み合わせる必要がある」など。

もしちょうどその時期にBTCが本当に調整した場合、このツイートは「神予測」として何度も引用されます。

BTCが暴落したとき、トレーダーは理由を切実に求めます。SNSを見れば、テクニカル分析は「サポートラインを割った」、マクロ分析は「日本の利上げ」と言いますが、これらの説明は複雑すぎて不確実です。

一方、ミステリーはシンプルで明確な答えを提供します：「土星逆行で暗号資産業界はベアマーケットに突入した」。

この説明は相場や政策、データの理解を必要とせず、天体の動きが市場に影響を与えると信じるだけでいいのです。だからこそ急速に拡散し、共通認識となります。

さらに重要なのは、ミステリーの曖昧さが、それを永遠に反証不可能にしていることです。

達人が「水星逆行中は取引するな」と言えば、損をしたら「達人の忠告を聞かなかったから」、儲かったら「命盤が特別で逆行トレンドに合っていた」となります。タロットカードが「近日中に大きな変動がある」と示せば、上がっても下がっても当たりです。

このように、どう説明しても正しいという特性が、ミステリーを暗号資産業界で無敵の存在にしています。

だからトレーダーたちは迷信しているのではなく、脳が最もエネルギー効率の良い方法で情報を処理しているのです：役立つものだけを覚え、役に立たないものは無視し、複雑な分析の代わりにシンプルな説明を使います。

ミステリーは正確だから流行しているのではなく、常に正確に見えるから流行しているのです。

ミステリーのソーシャル属性

ミステリーが暗号資産業界で流行するもう一つの理由は、それが一種のソーシャル・カレンシーになっているからです。

テクニカル分析を話すと意見が分かれますが、ミステリーを話すと正解も間違いもなく、共感だけがあります。「あなたの人生K線は当たっていますか？」という話題が盛んに議論されるのは、みんなが本当に信じているからではなく、誰でも参加できる話題で、専門的なハードルがないからです。

一つの例が、ミステリーの需要が存在することをよく証明しています。

以前、私たちの読者から「運勢を調べる機能を追加できないか」とよく聞かれました。リクエストが多かったので、実際にウェブサイトに「今日の運勢」セクションを作りました。

本当にそれで意思決定をするわけではありませんが、みんなが共通の話題や、毎日の心のマッサージの儀式を求めているのです。

グループで「今日は水星逆行だからエントリーしない」と言っても、「それは科学的じゃない」と疑う人はおらず、むしろ「私もだ、一緒にこの波を避けよう」と返してくれる人がいます。

このようなやり取りの本質は、お互いの不安が正当であることを確認し合うことです。

Pew Researchの2025年の調査によると、アメリカの成人の28%が毎年少なくとも一度は占星術、タロットカード、占いを利用しています。

ミステリーはもはや周縁文化ではなく、普遍的な心理的ニーズとなっています。暗号資産業界はこのニーズを「プライベートな利用」から「公開の展示」へと変えただけです。

この権威ある答えのない市場で、ミステリーが提供するのは答えではなく、寄り添いです。

それで、あなたの人生K線は当たっていますか？

「人生K線」の爆発的人気は、暗号資産業界のやり方で、すべてのトレーダーの心の中にあるが認めたくない思いを表現しています：私たちが市場をコントロールできているという感覚は、運命をコントロールできているという感覚と同じくらい脆いのかもしれません。

自分の「人生K線」が今年はベアマーケットだと示しても、本当に全て売却して市場を去るわけではありません。しかし、損失を出したときに少し自責の念が減り、チャンスを逃したときに少し慰めが増えます：

「これは私のせいではなく、命盤の周期が合っていなかっただけだ」。

この7x24時間、年中無休、不確実性に満ちた市場で、私たちが本当に予測したいのは自分の人生の流れではなく、テーブルに居続けるための心理的な支えなのです。