ntt データ ブロック チェーン 実証 実験の総覧
NTTデータのブロックチェーン実証実験
ntt データ ブロック チェーン 実証 実験は、NTTデータが国内外で行ってきた複数領域のPoC(実証実験)を指し、貿易決済、サプライチェーン、保険、NFTや文化支援など多岐にわたる検証を含みます。この記事では、ntt データ ブロック チェーン 実証 実験の目的、主要プロジェクト、技術要素、規制上の留意点、商用化に向けた示唆を整理して紹介します。
(報道時点:2023年12月27日、出典:NTTデータ ニュースリリース等)
背景と目的
ntt データ ブロック チェーン 実証 実験の背景には、台帳の改ざん耐性、第三者への透明性、分散化による信頼性向上といったブロックチェーン固有の利点があります。NTTデータはこれらを活かし、業務効率化やリスク削減、企業間データ連携基盤の社会実装を目指して多数の実証を実施しました。目的は大きく次の3点です:
- 業務効率化:紙や手作業が中心の業務を電子化し、処理速度と正確性を向上させる。
- リスク削減:取引の同時決済(DvP)やトレーサビリティで金融・物流リスクを低減する。
- データ連携基盤:企業や自治体間での安全なデータ共有基盤を構築し、新たなビジネス創出につなげる。
これらを踏まえ、NTTデータはパートナー企業とともに実務に即した検証を重ねています。
主要な実証実験とプロジェクト
以下に、主要な実証実験を「目的」「参加組織」「期間」「使われた技術」「検証項目」「結果・確認点」「事業化への次ステップ」「法規制上の考慮点」を簡潔に示します。ntt データ ブロック チェーン 実証 実験という観点で整理しています。
貿易決済・TradeWaltz連携実証(電子B/Lとデジタル通貨の同時交換)
- 目的:電子B/L(電子船荷証券)とデジタル通貨/暗号資産の同時移転(DvP:Delivery-versus-Payment)をブロックチェーン上で検証し、取引リスクを低減する。
- 参加組織:NTTデータ、東京海上日動、スタンデージ、トレードワルツ等。
- 期間:報道時点の主要公表は2021年(実証実験を実施)。
- 技術基盤:企業向けブロックチェーン(Hyperledger系/企業向けDLTやトークン化技術)、スマートコントラクトでの資産移転制御。
- 検証項目:電子B/Lのデジタル表現と、デジタル通貨の同時移転(Atomicity)、当事者認証、運用フロー。
- 結果・確認点:同時交換の技術的実現可能性を確認。DvPにより決済リスクが軽減される点を確認。運用面では当事者間の合意プロセスや法的扱いが課題に。 (報道時点:2021年12月27日、出典:NTTデータ ニュースリリース)
- 事業化への次ステップ:実運用に向けた法制度調整、標準化、スケールテスト。
- 法規制上の考慮点:電子B/Lの法的承認、各国のデジタル通貨(CBDC)や暗号資産規制との整合性、マネロン防止対策。
期待効果として、DvPの実現により取引リスク低減とコスト削減が見込まれます。NTTデータは貿易業務のデジタル化と金融側のトークン化の橋渡しを図っています。
貿易情報連携基盤(NEDO委託のPoC、2018年以降)
- 目的:紙ベースの手続きの電子化と、NACCS等既存貿易システムとの連携による輸出リードタイム短縮。
- 参加組織:NTTデータと複数の貿易関連事業者、NEDO委託プロジェクトとして実施。
- 期間:2018年開始のプロジェクトに端を発する実証群。
- 技術基盤:Enterprise EthereumやHyperledger等の企業向けDLTを採用し、既存基盤とのAPI連携を重視。
- 検証項目:貿易書類の電子化、NACCS連携、港湾オペレーションでのデータ改ざん防止と共有。
- 結果・確認点:書類電子化でのリードタイム短縮および事務コスト削減効果を確認。ただし、既存システムとの互換や業界全体の合意形成が課題。
- 事業化への次ステップ:関係機関との協働による標準化、法制度対応。
- 法規制上の考慮点:電子書類の法的効力、個人情報保護、関税・検疫手続きとの調整。
この実証は国内貿易業務のデジタル化を促す基盤としての性格を持ち、ntt データ ブロック チェーン 実証 実験シリーズの初期段階を形成しました。
ブロックチェーン間インターオペラビリティ実証(Datachainとの連携)
- 目的:異なるブロックチェーン間での安全かつ自動化された価値移転(Cross-Frameworkの相互運用)を検証。特にHyperledger FabricとCosmos間の価値移転を想定。
- 参加組織:NTTデータ、Datachain等。
- 期間:主要発表は2021年。
- 技術基盤:IBC/Relay方式、Relayノードによるブリッジ、スマートコントラクトによる資産ロック/リリース。Fabric-IBCのミドルウェア的設計も検討。
- 検証項目:Atomic Swapの実現(自動化された権利移転)、Relay方式の信頼性、エラーハンドリング。
- 結果・確認点:Relay方式による実装でクロスチェーン価値移転の可能性を示した。HTLCと比較して運用性・拡張性の違いが明確に。セキュリティ上の信頼境界設定が重要。 (報道時点:2021年、出典:Datachain発表)
- 事業化への次ステップ:運用ルールの明確化、標準化への参加、マルチプラットフォーム対応ツールの整備。
- 法規制上の考慮点:資産の所在証明、マネロン対策、相互運用時の責任分配。
Relay方式はHTLCに比べて柔軟な設計が可能ですが、中間ノードの信頼性確保や監査可能性が運用上の焦点となります。
スマートフードチェーン(トレーサビリティ/冷蔵チェーン)
- 目的:農水産物の輸出拡大に向け、RFIDや温度ロガーとBlockTrace®を組み合わせたトレーサビリティを検証し、検疫・品質保証を強化する。
- 参加組織:NTTデータ、iQuattro、ukabis等の物流・トレーサビリティ企業。
- 期間:2022年に関連実証の公表あり。
- 技術基盤:BlockTrace® for Cold Chain、IoTセンサーデータ(温度ログ)、RFIDタグ、DLT上のデータ記録・参照。
- 検証項目:冷蔵輸送中の温度履歴の改ざん防止、輸出時の検疫情報連携、フードロス削減の効果検証。
- 結果・確認点:温度監視とトレーサビリティで品質保証が向上し、輸出先の信頼獲得に寄与。IoTデータの信頼性確保とデータ量の扱いが技術課題。
- 事業化への次ステップ:業界標準化、検疫当局との連携、サプライチェーン参加企業の拡大。
- 法規制上の考慮点:輸出検疫規則、個別検査データの取り扱い、センサー精度と証跡性。
スマートフードチェーンは、品質保証や検疫対応で実効性を示し、輸出競争力向上への貢献が期待されます。
保険業界向け実証(無償実験環境提供)
- 目的:複数保険会社間での情報共有基盤を提供し、保険金支払いや診断データ連携の自動化を検討する。実証環境を無償提供して業界の検討を促進。
- 参加組織:NTTデータと複数の保険会社。
- 期間:2018年に無償提供の発表あり。
- 技術基盤:企業向けDLT、表計算UIツールによる検証環境、スマートコントラクトでのルール実装。
- 検証項目:保険金自動支払フロー、複数社間の同意形成、個人情報の扱い。
- 結果・確認点:技術的に保険金自動支払などの自動化が可能であることを確認。実運用には法令準拠やプライバシー保護の整備が必要。
- 事業化への次ステップ:試験的サービスの導入、規制対応の検討、利用者受容性評価。
- 法規制上の考慮点:個人情報保護法、金融商品取引関連規制、保険業法上の要件。
この取り組みは業界横断的なデータ共有とプロセス自動化の有効性を示しました。
NFT/文化機関向け実証(バチカン図書館プロジェクト)
- 目的:支援者にNFTを発行し、高精細画像の閲覧権などを付与してオンラインコミュニティを形成。デジタルアーカイブの活用を検証。
- 参加組織:NTTデータ、バチカン図書館。
- 期間:2023年に実証開始の発表あり。
- 技術基盤:BlockTrace®、標準的なWeb3ウォレット(例:Bitget Walletを推奨するユースケース説明)、トークン発行プラットフォーム。
- 検証項目:NFT発行と権利付与の運用、コミュニティ形成効果、著作権・文化財保護との整合性。
- 結果・確認点:支援者との新たな接点作りや資金調達の可能性を確認。文化財のデジタル管理ルールが必要。
- 事業化への次ステップ:コミュニティ運営の定常化、権利管理の仕組み整備。
- 法規制上の考慮点:著作権法、文化財保護法、消費者保護。
NFT実証は文化機関の資金調達やファンとの関係性構築に新しい選択肢を示しました。
その他のユースケース実証(電力取引、MaaS、公共データ等)
- 電力取引:P2P電力取引や非化石証書のトラッキングで、トレーサビリティと信用の担保を検証。検証項目は取引透明性、執行の自動化、証書の信頼性。
- MaaS:モビリティデータのプラットフォーム化で、複数事業者間のデータ連携と決済を検証。検証項目はデータプライバシー、API連携、課金モデル。
- 公共データ:地方自治体向けオープンデータ検証で、データの真正性確保と市民利用の促進を検討。
これらはそれぞれ業界固有の要件(リアルタイム性、プライバシー、既存規制)に応じた技術検証を実施しました。
技術要素とアーキテクチャ
ntt データ ブロック チェーン 実証 実験では、以下の技術が主に用いられました。
- Hyperledger Fabric:企業間のプライベートネットワークに適した許可型DLT。トランザクションのプライバシー制御が可能。
- Enterprise Ethereum:スマートコントラクトを利用した企業向け分散台帳。互換性とパブリック側との連携性を重視。
- Cosmos/Tendermint & IBC:異なるチェーン間の相互運用を目指すフレームワーク。IBCはチェーン間通信プロトコル。
- Relay方式:中継ノードで状態を転送する方式。HTLCと比較し柔軟な設計が可能だが、中継点の運用信頼性が課題。
- スマートコントラクト:業務ルールの自動化に使用。決済の自動執行や条件判定に利用。
- BlockTrace®:NTTデータが展開するトレーサビリティ基盤(特に食品や文化財関連で利用)。
NTTデータの戦略はマルチプラットフォーム対応で、企業ごとの要件(プライバシー、スループット、法令順守)に合わせた基盤選定を行う点が特徴です。Interchain-bridgeやRelayを使うことで既存の企業ネットワークと新たなブロックチェーン間の橋渡しを試みています。
インターオペラビリティ手法(HTLC vs Relay)
- HTLC(Hashed Time-Locked Contract):ハッシュとタイムロックを用い、複数チェーンで同時に条件付き決済を行う古典的手法。ケイパビリティとしては単純なAtomic Swapに向くが、拡張性や柔軟性で課題がある。
- Relay方式:状態やイベントを中継ノードが読み取り別チェーンに反映する方式。IBCはこの考え方をプロトコル化している。RelayはHTLCよりも多機能でクロスプラットフォームを実現しやすいが、中継ノードの信頼性と監査性の担保が必要。
NTTデータの実証では、運用上の監査性、フォールトトレランス、パフォーマンスを勘案してRelay方式の有用性を検証しました。一方で、中継ノードの運用ルールや責任分配が明確でないと実運用でのリスクとなる点が指摘されました。
実証結果とビジネス上の示唆
ntt データ ブロック チェーン 実証 実験を通じて得られた代表的な知見は以下の通りです:
- 同時交換(DvP)の技術的実現可能性を確認:電子B/Lとデジタル通貨の同時移転は技術的に可能であり、貿易取引の決済リスク低減に寄与する。
- トレーサビリティの有効性:食品や物流領域での温度・履歴管理は品質保証や検疫で効果を示した。
- インターオペラビリティの現実性:異なるフレームワーク間の価値移転は可能だが、運用ルールや監査体系、法的整理が必要。
事業化への示唆としては、コスト削減効果と中小企業の導入支援、国際貿易におけるリスク軽減を実証データを基にしたビジネスモデル構築が重要です。技術は一定水準に到達しているものの、実運用には業界全体の合意形成や法制度の整備が鍵となります。
規制・法整備・社会的課題
ブロックチェーン実装の際に留意すべき規制上のポイントは次の通りです:
- 電子B/Lの法的承認:紙の船荷証券と同等の法的扱いを得るための制度整備が必要。
- CBDCや各国のデジタル通貨動向:国が発行するデジタル通貨との整合性、クロスボーダー決済の枠組み。
- マネーロンダリング対策(AML/CFT):トークン資産を用いる場面でのKYC/AML要件の適用。
- プライバシーと個人情報保護:IoTや保険データなど機微情報の取り扱いと規制準拠。
(報道時点:各プロジェクト発表に基づく)これらの課題は技術だけでなく、法制度・業界ルールの整備が並行して進むことが必要です。
商用化と今後の展望
ntt データ ブロック チェーン 実証 実験の商用化ロードマップでは、以下が示唆されます:
- 事業化ステップ:実証→パイロット→限定商用化→スケール化。2022〜2025年は技術成熟期からパイロット展開の時期に相当。
- 組織体制:NTTデータはグローバルCoE(Center of Excellence)体制を整備し、標準化活動(コンソーシアム参加、ISO等)に関与。
- ビジネスモデル:トレーサビリティや貿易決済のSaaS化、業界向けプラットフォーム提供、ウォレット連携(例:Bitget WalletのようなUXを意識した実装)などが見込まれる。
実証から商用化へ向かう鍵は、規模に応じたコスト設計と業界採用の促進、運用サポート体制の確立です。
批判・限界・リスク
ntt データ ブロック チェーン 実証 実験には以下のような限界とリスクが認められます:
- スケーラビリティ:多数の参加者や高頻度トランザクションへの対応。
- 異常系・攻撃シナリオの網羅:実証で常時の攻撃耐性検査や長期運用での不具合検証が不十分な場合がある。
- 鍵管理と運用リスク:秘密鍵の管理不備は資産喪失やデータ偽装に直結する。
- プライバシー懸念:オンチェーンで扱うデータ種別と最小化設計の必要性。
- 合意形成の遅れ:利害関係者間でのルール合意が事業化のボトルネックとなる。
これらは実証段階で明確化されるべき運用上の課題であり、事業化に際しては対応策(オフチェーン保管、鍵管理サービス、監査ログの整備等)が求められます。
関連組織・パートナーシップ
主な共同実施企業・団体とプログラム:
- 東京海上日動(貿易決済実証等)
- スタンデージ(決済フロー関連)
- トレードワルツ(貿易プラットフォーム)
- Datachain(インターオペラビリティ検証)
- ConsenSys等の技術パートナー(Ethereum系検証)
- NEDO(研究助成・委託事業)
- 各地方自治体、保険会社、物流企業、文化機関(バチカン図書館等)
また、SIPや業界コンソーシアムなどの標準化活動にも参加しており、業界横断での協働を進めています。
参考事例(事例別の短い一覧)
- 貿易決済実証 2021 — 電子B/Lとデジタル通貨の同時交換検証(NTTデータ、東京海上日動、トレードワルツ)
- 貿易情報連携基盤 PoC 2018〜 — NACCS連携と港湾実証(NEDO委託)
- インターオペラビリティ検証 2021 — DatachainとRelay/IBC方式の検証
- スマートフードチェーン 2022 — BlockTrace® for Cold ChainとIoT連携実証
- 保険向け実証環境提供 2018 — 保険業界向け無償実験環境
- NFTと文化支援 2023 — バチカン図書館とNFTによる支援者コミュニティ形成
- 電力・MaaS等の分野横断実証 — P2P電力取引、MaaSデータプラットフォーム等
参考文献・出典
- NTTデータ ニュースリリース「新たな貿易決済の仕組みの実現に向けた実証実験を実施」(報道時点:2021年12月27日、出典:NTTデータ)
- NTTデータ サービスページ「NTTデータの取り組み - ブロックチェーン」(出典:NTTデータ)
- NTTデータ ニュースリリース「ブロックチェーンを活用したスマートフードチェーンシステムの輸出実証試験を開始」(報道時点:2022年、出典:NTTデータ)
- NTTデータ ニュースリリース「ブロックチェーン技術を活用した貿易情報連携基盤の実証事業を開始」(報道時点:2018年、出典:NTTデータ)
- Datachain / Speee 発表記事「Datachain、NTTデータとブロックチェーン間のインターオペラビリティ実現に向け技術連携」(報道時点:2021年、出典:Datachain)
- NTTデータ ニュースリリース「NFTを活用して支援者とバチカン図書館をつなぐオンラインコミュニティー形成の実証実験を開始」(報道時点:2023年、出典:NTTデータ)
- NTTデータ ニュースリリース「保険業界向けブロックチェーン実証実験環境の無償提供について」(報道時点:2018年、出典:NTTデータ)
各出典はNTTデータおよび共同事業者の公式リリースに基づく報道を参照しています。
もっと詳しく知りたい方へ:NTTデータの実証成果を踏まえた商用化やウォレット連携(例:Bitget Walletを想定したUX設計)についての解説を用意しています。ntt データ ブロック チェーン 実証 実験の最新動向を追いたい場合は、公式発表やコンソーシアムの活動報告を定期的に確認してください。
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