x402 & ERC 8004のナラティブ研究および対象分析

一、主要事件

• 2025年8月13日——ERC 8004がEIPプラットフォームで正式に提案され、EthereumコミュニティがAgent信頼インフラの標準化方向を探求していることを示す

• 2025年9月16日——GoogleがAgent Payments Protocol（AP2）を発表し、x402拡張/およびCoinbaseとの提携を発表、ステーブルコインと暗号決済をAgent決済システムに組み込む

• 2025年9月23日——CloudflareがCoinbaseと共同でx402 Foundationを設立し、x402を自社のAgent SDK/MCPサーバーに組み込むことを発表

• 2025年10月14日——VisaがTrusted Agent Protocol（TAP）を発表し、Cloudflareと共同開発したことを明確にし、Visa Developer CenterとGitHubで規格と実装例を提供

二、叙事分解

市場の一般的な見解として「AI Agent（人工知能エージェント）は将来の重要な経済体である」とされており、この判断は主に彼らの経済活動における役割の変化、効率向上、そして機械経済価値を捕捉・調整するためのフレームワークとビジョンに基づいています。以下の4つの観点から説明します：

1. AI Agentは徐々に人間に取って代わり、新たな「資産」となる

経済全体において、AI Agentは「自動的に継続的なキャッシュフローを生み出す資産」と位置付けられています——現時点では人間の割合が100%ですが、将来的にはAgentの割合が増加し、時間の経過とともに人間を徐々に置き換えていくでしょう。このような資産はトークン化され、コミュニティ内で分散型インセンティブメカニズムを構築できます。起業家や市場は、これらのAgentが将来的に「非常に強い経済能力」を持つ場合、トークン化と参加者間の利益調整によって、全く新しい分散型経済主体と投資モデルを創出できると信じています。

2. Agent-to-Agent（A2A）協力は最も効率的なビジネスモデル

AI Agent同士の協力・決済（A2A）は、将来「最も魅力的で」「最も効率的」なビジネスモデルと考えられています——この協力モデルの出現は、現実の複雑なタスクが複数のagentの協力によってのみ完了できることに基づいており、現実社会のアウトソーシングメカニズムに似ています。分業と協力を通じて、AI Agentはタスクを分割して他のAgentに委託し、その収入から費用を支払うことができます。ブロックチェーンは、決済と情報の自動実行ロジックの利点を備えています。

3. Agent経済の標準化と価値捕捉

Google A2Aプロトコルの不足に対応し、提案されたERC-8004は3つの重要なオンチェーンレジストリを拡張導入し、Agent経済における重要な信頼問題を解決します：

1.アイデンティティ（私は誰か）：Agentのアイデンティティ識別問題を解決

2. 評判（レピュテーションシステム）：なぜあなたを選ぶのかという問題を解決し、外部参照基準と客観的評価を導入

3. 検証可能性：Agentの作業の検証可能性を確保

このようなAgent間の協力と標準制定は、「価格の統一標準化と市場化」を保証し、価格と品質のマッチングを確保します

4. AI経済体のオンチェーン金融インフラ

AI Agentは将来の重要な経済体として、その運用はオンチェーン金融インフラに依存しています：Agentは独自のウォレットを持ち、オンチェーンで多次元の評判を継続的に蓄積します。このネイティブな利点は、現在のステーブルコインのクロスドメイン決済能力と組み合わせることで、Agent間の効率的かつ低コストな取引の課題を効率的に解決し、大規模な機械経済体に必要な決済と調整能力を提供します。

三、用語解説

用語解説の部分では、コア定義までで十分だと考えますが、より理解しやすくするために、人間社会の進化と構造の比較を通じて説明します。最終的にこの4層の協力が完全な機械社会を形成します：言語、通貨、信用システムを持つ：

• A2A ：agentが「会話できる」ようにする、結局コミュニケーションが前提

• AP2 ：彼らが「支払いできる」ようにする、決済問題を解決

• x402 ：彼らが「新しいお金（暗号資産）」を使えるようにし、暗号資産決済モジュールを組み込む

• ERC-8004 ：彼らに「アイデンティティと評判」を持たせ、認証システムを導入

暗号市場との関連性を考慮し、ここではx402とERC 8004、すなわち価値層とアイデンティティ層に重点を置いて分析し、alphaチャンスの配置を模索します。

四、注目ポイントと対象

以下は「ボトムアップ」の視点からx402/ ERC-8004で最も注目すべきおよび配置すべき方向を列挙します：基盤チェーン → プロトコル層 → アプリケーション層

1. 基盤チェーン

ETH

▪ 標準制定の中核 & ネットワーク効果の堀：ERC-8004の提案者および長期的な標準推進者として、EthereumはERC-20、ERC-721などの標準で主導的地位を維持し、エコシステムの慣性とネットワーク効果の優位性を持つ

▪ 戦略組織と方向性の確立：Ethereum Foundationは組織改革後にdAI Teamを設立し、「AI Agentと機械経済の決済および調整層となる」ことを使命とし、アイデンティティ、評判、決済標準における発言力をさらに強化

▪ 長期的な価値論理：ETHは「標準制定+決済層燃料」という二重の役割を担い、標準コンセンサスの出発点であり、機械経済運用の基礎的価値媒体でもある

BASE

▪ x402技術標準の主導者：CoinbaseのHTTP 402 → ERC-402推進の後ろ盾があり、Baseはそのオンチェーン拡張として、agent決済と機械決済の最初の実験場となる

▪ 決済クローズドループの優位性：USDCのネイティブ発行チェーンであり、Coinbaseの法定通貨ゲートウェイとウォレットシステムと組み合わせて、Baseは「現実決済→オンチェーン決済」の完全なクローズドループ能力を持つ

▪ 戦略的ポジショニングのアップグレード：Baseは単なるEthereum L2からAI Agent経済層（Agentic Economy Layer）向けインフラへと転換し、ERC-402標準が最初に実装され商業フローが形成される主戦場となる可能性が最も高い

SOL

▪ 実行効率と実装能力が最も高い：マイクロペイメント、高頻度通信、自動決済などのシナリオで、Solanaは高TPS、低レイテンシ、低Gasコストの特性により、x402コンセプトの実行と大規模実装能力を自然に備えている。

▪ ICMビジョンと機械ネイティブ性：Anzaチームが提唱したInternet Capital Markets（ICM）ビジョンにより、Solanaは「機械と資産のネイティブなインタラクション」の理想的なプラットフォームとなり、x402の決済ロジックと高度に一致している。

▪ エコシステムの成熟度が先行：過去2年間で、Solanaはオンチェーンエコシステムのクローズドループを形成——資産発行、自動取引から流動性と信用管理まで、Agent経済の実際の運用基盤をすでに備えている。

TAO( Bittensor)

▪ AIネイティブインフラ層：Bittensorは分散型AIネットワークを構築し、サブネット（Subnets）によってモデルのトレーニング、推論、評価を組織し、機械経済の基盤となる計算と価値決済基盤を形成。

▪ モデル評判とインセンティブシステム：サブネットのスコアリングメカニズムは「アイデンティティ+評判+報酬」機能を自然に備え、ERC-8004の評判レジストリロジックと呼応できる。

▪ 機械決済と価値捕捉のクローズドループ：TAOトークンはモデル呼び出し決済、検証インセンティブ、ガバナンス機能を担い、「AI-to-AI決済」クローズドループを最初に形成したネイティブ資産の一つ。

KITE AI（未発行トークン）

￮ Agentモデル協力層インフラ：Kite AIは複数Agent協力フレームワークの構築を目指し、AIモデル、プラグイン、APIが統一環境下でタスク分配と呼び出しを完了できるようにし、機械経済における「実行調整層」を形成。

￮ 検証可能な実行と決済インターフェース：プロジェクトはAP2 / x402プロトコルを自社アーキテクチャに統合し、各Agent呼び出しが検証可能な決済とタスク成果を記録できるようにし、「決済可能なインテリジェントエージェントOS」として位置付け。

￮ エコシステム統合とトークン化の可能性：KITEチームはERC-8004アイデンティティメカニズムの導入を試みており、各Agentに評判プロファイルを割り当てる。将来的には「Agent-to-Agentサービス市場」の基盤プロトコル層となり、タスク実行と決済のトークン化クローズドループを実現する可能性がある。

2. プロトコル層+アプリケーション層

この層はx402（価値層）とERC-8004（アイデンティティ層）の重要な価値捕捉地であり、「機械社会を運用可能にする」コアロジックを担っています。新プロトコルまたは新しいナラティブを持つ既存プロトコルに注目します。

$DREAMS - Daydreams

￮ 概要：Daydreams.Systemsは自律エージェントのエコシステムおよびラボとして位置付けられ、3つのコア製品でクローズドループを形成：DAYDREAMSフレームワーク（構築）、DREAMS Router（決済）、LUCIDプラットフォーム（運用）。エージェントが最小限の管理で長期タスクの計画と実行を実現することを目指す。

￮ ポジショニング：エージェントフレームワーク+決済ルーター+運用プラットフォーム

￮ CA: Sol_GMzuntWYJLpNuCizrSR7ZXggiMdDzTNiEmSNHHunpump

￮ 時価総額：$6.4M

￮ ナラティブ関連度：⭐⭐⭐⭐⭐

$PAYAI - PayAI Network

￮ 概要：PayAIは「AI時代の決済インフラ」として位置付けられ、Solana-firstのマルチネットワークアーキテクチャを基盤に、自律AIエージェントとマイクロトランザクション向けの即時コードレベル決済能力を提供。コアコンポーネントはx402 Facilitatorで、ミリ秒単位の決済、低コスト、エージェント/アプリへのシームレス統合を強調。

￮ ポジショニング：決済/決済インフラ

￮ CA: Sol_E7NgL19JbN8BhUDgWjkH8MtnbhJoaGaWJqosxZZepump

￮ 時価総額：$5.1M

￮ ナラティブ関連度：⭐⭐⭐⭐⭐

$MRDN - Meridian

￮ 概要：Meridianは「決済レール・アズ・サービス」を提供し、1行のミドルウェアコードで任意のウェブサイト、API、データセット、またはMCPサーバーを従量/ページ単位の有料リソースに変換。標準のHTTP/1.1 402 Payment Requiredに準拠。AIエージェント経済の「マイクロ/ナノサービス」決済層として位置付け、非カストディアル、安全、クロスフレームワークの相互運用性を強調。

￮ ポジショニング：決済レール、AI Agent決済

￮ CA: Base_0xe57e601c06689d3e2bf7db7bebb14b4ff28400c6

￮ 時価総額：$890K（Coingeck統計、差異の可能性あり）

￮ ナラティブ関連度：⭐⭐⭐⭐

$SANTA- S.A.N.T.A

￮ 概要：SANTAは@questflowがリリースした複数エージェントによる分散型AI「バーチャルカンパニー」セットで、暗号チームの運営とリサーチ自動化を対象とする

￮ ポジショニング：AI Agents Swarm

￮ CA: Base_0x815269d17c10f0f3df7249370e0c1b9efe781aa8

￮ 時価総額：$3.1M

￮ ナラティブ関連度：⭐⭐⭐⭐

$AURA - Aura AI Marketplace

￮ 概要：AurraCloudはx402プロトコルをコアに、あらゆるAIエージェント、ワークフロー、APIが迅速にオンチェーンマイクロペイメントを実現できるよう支援し、MCPカストディからスマートウォレット、ダッシュボードまでフルスタックインフラを提供。

￮ ポジショニング：プラットフォーム型インフラ、決済プロトコル層

￮ CA: Base_0xdCaA5E062b2be18E52eA6ED7ba232538621dDC10

￮ 時価総額：$1.3M

￮ ナラティブ関連度：⭐⭐⭐⭐

$GLORIA - GLORIA AI

￮ 概要：Gloriaは「AI駆動のニュースインテリジェンスプラットフォーム」で、市場速報からノイズを除去し、取引と意思決定に最も重要なシグナルを抽出・即時配信することを目指す。端末、ボット、APIの3ラインで並行展開し、人間ユーザーと自律AIエージェントの同時利用シーンをカバー、トークンと開発者エコシステムも用意。

￮ ポジショニング：AIニュースインテリジェンス

￮ CA: Base_0x3b313f5615bbd6b200c71f84ec2f677b94df8674

￮ 時価総額：$2.4M

￮ ナラティブ関連度：⭐⭐⭐

$Virtuals - Virtuals Protocol

￮ 概要：Virtuals Protocolは「生産型AIエージェント社会」を構築：各エージェントが自律的にサービスや製品を提供し、人間や他のエージェントとオンチェーン取引を行う。すべてのエージェントは独立したAgent Tokenとしてトークン化され、資本形成、オープン参加、インセンティブアラインメントを実現；Virtuals ProtocolはACPスマートコントラクトとx402決済プロトコルを深く統合済み

￮ ポジショニング：AI Agent資金調達インフラ

￮ CA: Base_0x0b3e328455c4059EEb9e3f84b5543F74E24e7E1b

￮ 時価総額：$469.32M

￮ ナラティブ関連度：⭐⭐⭐⭐⭐

$EIGEN - Eigen Cloud

￮ 概要：EigenCloudはEigenLayerベースの「検証可能なクラウド」で、EigenCompute/EigenAIを使いAIと計算を検証可能なサービス化し、AP2とx402と連携してエージェント決済の標準化とオンチェーン決済を実現中。

￮ ポジショニング：AI Agent検証可能クラウド

￮ CA: ETH_0xec53bF9167f50cDEB3Ae105f56099aaaB9061F83

￮ 時価総額：$432.43M

￮ ナラティブ関連度：⭐⭐⭐

$SWTCH - Switchboard

￮ 概要：Switchboardは「すべてがオラクル」を目指し、マルチチェーンエコシステム向けにdAppへ検証可能なリアルタイムデータ、組み合わせ可能な集約能力、安全なランダム数を提供。コアセールスポイントは高速、パーミッションレス、高度なカスタマイズ性で、開発者が最小限の摩擦で任意のデータソースを取得しコントラクトロジックに利用できるようにする。

￮ ポジショニング：分散型オラクル、Agentデータサービス

￮ CA: Sol_SW1TCHLmRGTfW5xZknqQdpdarB8PD95sJYWpNp9TbFx

￮ 時価総額：$21.19M（FDVは$122.85M）

￮ ナラティブ関連度：⭐⭐⭐

上記の新興プロジェクト以外にも、従来の基盤プロトコル/パブリックチェーンがAI Agentナラティブで再構成される可能性にも注目する必要があります。

例：

Safe（マルチシグとトレジャリー管理）は、agent経済で「自治体または機械アカウント」の資産カストディ層に進化可能；

Superfluid（ストリーミング決済プロトコル）は、x402シナリオ下の連続マイクロペイメントとサービスサブスクリプションに自然に適合；

ENS / EAS / Galxeなどのアイデンティティおよび証明プロトコルは、ERC-8004アイデンティティ層に既存の評判と検証モジュールを提供可能。

SUI（AP2初期参加者）は、Questflow / Googleと共同でagent-to-agentマイクロペイメントモデルをテストし、オブジェクト指向アーキテクチャによりアカウント抽象化と並列決済がAP2のマルチアカウント認可と予算管理メカニズムに自然に適合。

五、リスク警告

① 資産の高いボラティリティ：現在はナラティブ推進初期段階であり、従来プロジェクトを除き時価総額が小さく流動性が脆弱でボラティリティリスクが大きい。

② チームとガバナンスリスク：一部プロジェクトはチームが匿名、ガバナンスが不十分、資金の帰属が不透明で、高度な操作や放棄リスクが存在。

考察：現在のAI Agent / Machine Economyナラティブは依然として抽象的である：標準の雛形はすでにあるが、「トークンアンカー/価値ドライバー」が不足している。一つは、エコシステムが試験段階にあり、キャッシュフローと手数料の価値捕捉メカニズムの評価が難しく、信頼できる市場規模が不明確；もう一つは、直感的に使える製品が不足しており、短期的には市場の強いコンセンサスを形成しにくく、継続的な注視が必要。注目すべきは、Google、Visa、Cloudflareなどの伝統的な大手企業の布陣により、ナラティブの爆発点に外部トリガー条件が備わっていることです。